能登草木の染研究室・通信Vol.10

2001年  9月 5日    発 行

新 谷 工 芸  ・   新 谷 幸 子

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ローの種類と性質 ・脱ロー方法  

染色で布に絵や文字の模様を付けるには(1)絞り(2)糸目友禅(3)ローケツ(4)型染(5)素描などの方法があります。浸し染では(1)絞りが主に使われ、他の技法は絞りを解いた上に行います。藍の浸し染は(1)絞り(3)ローケツ(4)型染を用います。草木の引き染では全ての技法ができますが、自由な表現が可能なローケツの技法が多く使われます。 


── ローの種類と性質 ── 
油脂系の防染剤:油脂系の液体、固体を布の上に塗布し水溶性の染料をはじくことによって、様々な模様を描きます。ローの性質を利用して表現に合った使い方をします。ローは単独で用いられる場合と、2種類以上混合して使うことがあります。染色方法は、主に引き染めで行いますが、藍染めなど熱を必要としない浸し染めも可能です。

 
   ローの種類  原 材 料  性 質    用    途



木蝋(もくろう) ハゼの木の実 低い融点 亀裂用・防染力は弱い
白蝋(はくろう) 木蝋を白く精製 低い融点 木蝋と同じだが少し硬いめ
カルナバ蝋 カルナバヤシ 高い融点 硬い、他のローと混合使用
松脂 松の樹脂 強い粘り キハツで薄めて使用する


蜜蝋 蜜蜂の巣 割れない 細い線などを描くのに使用
ステアリン酸 動植物の脂肪 もろい 亀裂用



パラフィン 石油 硬質防染 亀裂用、又はワックス併用
マイクロ ワックス 石油 高い粘度 白防染でパラフィンを併用
HMワックス 石油 強防染力 単独でも描きやすい

ソーピング ワックス 合成乳化剤 弱防染力 70℃以上のお湯で脱蝋

── ロー使用の実際 ── 
ロー鍋を電熱器で加熱又は温度調節器のあるてんぷら鍋を使用する

必要量のローを加熱→湯気が少し上がる程度に保温→発火点を越えると危険

参考・油脂系の白色防染剤として、松脂、ダンマル、イボタロー、型ロー、食用油、等がある。油脂系糸目防染のりにゴムがある。いずれも有機溶剤のキハツ、ガソリンで溶かすことが出きるが可燃性なので、不燃性のパークレン等を加熱して使用する方が安全。
※モチ米糊、伏せ糊は白生地の上では使用可能、ローとの併用は不可能
草木染色後の糊置きは化学変化が起きるのを利用する以外には使用しない

                


── ローを洗い落とす(脱ロー)── 

ローケツ染は便利な染色方法ですが、油性であるローを洗い落とすのに少し手間がかかります。溶剤、湯洗い、洗剤で洗って落とします。
◎アイロン+新聞紙+ザラ紙で落とす→ 溶剤で溶かす→ 染料を蒸しで止める→ 湯洗い 
◎脱蝋溶剤(パークレン、ドライクリーニング液)を加熱してローを溶かしますが、臭気を吸い込まないようにします。
◎ソーピングワックスのみ80℃の湯で溶解、脱ローできる。但し染料が水溶性のまま繊維に固着していない場合は不可。藍染めや顔料等を使ったときに使用する。
◎大きな作品は専門業者に依頼する方法もある


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