能登草木の染研究室・通信Vol.3

2000年  6月  6日   発 行

新 谷 工 芸 ・  新 谷 幸 子

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草木染講習会レポート


2000年6月3日・4日/草木染講習会

「料理民宿さんなみ」で能登の味覚を楽しみ「草木染をもっと楽しく自由に表現する」1泊2日の講習会は、2日間とも良いお天気で予定のスケジュールを無事終了いたしました。

山形県から三重県まで遠路14名の方が(前日1名がケガのため不参加)はるばる能登半島まで来てくださいました。ある方は前日に能登半島で宿泊、ある方は夜行バスで金沢まで来て、ある方は早朝から出発されたとのこと。そんなお疲れの中、6月3日午後1時から講習会は開始されました。

 

今回のテーマ

木綿布を濃く染める

絞り模様の多色染

オリジナル模様付け

草木染・布の仕上げ方

参加者とスタッフの記念写真(あれっ、もう2人はどこ?)料理民宿「さんなみ」玄関前にて

 

草木染を1度でもされた方は、草木染が難しく手間がかかり、しかも濃く染まらないし自由に模様がつけられない!と思われる事でしょう。

今回はそんな草木染の問題に挑戦してみました。

午後1時、簡単な挨拶と参加者の自己紹介の後、早速、参加者は草木染の経験、絞りの経験の有無に関わらず以下のハンカチ染めに挑戦です。この絞りの模様の尖った角を出します。

実技見本 bW

 実技見本 bQ

実技講習@絞りとホドキ

 絞りの重ね染で模様を付ける 

染め布に模様を付ける方法は色々ありますが、ここでは簡単にできる絞りの方法で効果的な模様の付け方を行います。

1絞りと括りの基本と問題点

(1)絞りを美しく仕上げる方法 
模様をはっきりさせる為の縫い方
模様の角を美しくする為の工夫
絞りラインを美しくする縫い目の揃え方 
絞りの染め筋(染まり方)を揃える方法 

(2)広い面積を絞る方法  
帽子絞りに食品用ラップを使用する  
耐熱性、熱で縮む物が最も良い。柔らかい質で伸びるものは避ける数10センチに及ぶ広いものは、布の中に木の芯を入れる

唯一の男性参加者=考古学の勉強で繊維全般に関して熱心に学んでいた
絞りの工程 下絵ラインを均一に縫う→空気を抜いて絞る→ラップをかけ、完全に空気を抜く→糸でしっかり括る  →もう一度ラップをかけて括る(慣れるとラップは2重にして一度) 

染めの工程 布を水に浸しておく(2時間から1昼夜)→染め→媒染→染め→媒染を好みの濃さまで繰り返す→広い部分の括りを解き、色だまりと媒染だまりを洗い流す

※ラップを絶対に破らないこと
2絞りの重ね染

例)板締め絞り
割り箸でハンカチに板締め絞りをする
→タマネギ+アルミ媒染→解く→洗うその上にもう1度布の折り方を変え(割り箸の場所を変え)タマネギ+鉄を染める
同じ考え方で、花びらや、葉を絞って染める事もできる

左はテラスで媒染の作業
上は2回目の染めが終わり絞りを解く参加者の皆さん
右は布の仕上げ方
=絞りの出具合を確認していく

実技講習A多色染工程

   木綿布に好みの色を濃く染めたい 

草木染は木綿布に好みの色が染められないし、濃い色も染められないという現実から。絹布や毛糸の動物性繊維には、草木の液はよく染まるのですが、木綿や麻布には一部の植物しか染まりません。

ここでは木綿布に1:好みの色を染める方法  2:濃く染める方法を行ないます。

草木染で木綿を濃く染める一般的な方法として、牛乳地入れ、豆汁地入れ、アルカリ地入れ、タンニン地入れ、濃染処理:KLCなど市販の濃染処理液等があるが、それぞれに手数が必要な事と、個別の欠点があります。

また、塩酸系や硫酸系の媒染剤を使うと魅力ある発色をする場合もありますが、能登草木の染研究室では酢酸アルミ、酢酸銅、木酢酸鉄液を使用して、様々な色を染め上げています。

先ず、「草木染の基本の染め方」を見直します

 基本工程の考え方 

一般的な浸し染の基本工程
(1)染
+水洗
(2)媒染
+水洗
(3)残液染
+水洗
(4)媒染
+水洗
沸騰20分 室温20分 沸騰20分 室温20分
「料理民宿さんなみ」さんの食堂を無理を承知で展示場兼作業場にしてしまいまった

1木綿を濃く染めるために
2好みの色を染めるために
3ムラなく染めるために

 染め、媒染ともそれぞれに丁寧な作業が必要

 染め液量、媒染液量は布が自由に動く量が必要

 染め、媒染時間中は、常に布の上下を切り返し動かし続けること

 染め時間中、
 手袋をした手の入る温度限界まで両手で布をまんべんなく広げ続ける事

4より安定して濃く染めるために

(1)水の選択 (2)染料液量 (3)媒染剤の量等の吟味が必要

 


染め作業が終わって夕食までのひととき、富山湾に面する南向きの海岸線を車で25分

参加者は能都町の縄文真脇温泉でハードスケジュールの疲れを癒しました。

さぁ、いよいよお待ちかね「料理民宿さんなみ」の夕食です!

三重県から参加した皆さん、海餅は美味! ワタリガニのいしり唐揚げを食す メバルの刺身に苺ソースを味わう

夕食後は「草木染Q&A」と「フリートーク」

 1:重ね絞りの図案の作り方 

染色で思い通りの模様を付けるには図案が必要

(1)アイディアをまとめる→(2)染める色を決める→(3)工程を決める

まず、2色の重ね染めからはじめます。白色のまま残す部分、1回目に染めて絞る部分、ほどいて2回目の色のみ染める部分、1回目2回目の色が重なる部分を掌握します。

はじめは真似から。今回の講習会参加者には、カタログ作品の図案使用が認められています。自分の手で原寸大の図案を描いてみましょう。

 2:耐光堅牢度について 

(1)耐光堅牢度の高い(良い)植物を選んで染める

木綿に染まる植物の耐光堅牢度

藍、ヤシャブシ、アカネ、ザクロ、クルミ、コガネバナ、ソヨゴ、ゴバイシ、ウメ、タマネギ、   ピラカンサ、ビワ、ガマズミ、ウコン、マリ−ゴ−ルド、クチナシ、 (先に記述してあるもの程良いが、染め方、後処理等の条件で堅牢度は変わる)

(2)耐光堅牢度を高める工夫

草木染は熱や光によって変退色しやすい物が多いのが現実です。草木染だから色が変わっても仕様がない、と諦めるのではなく少しでも耐光堅牢度を高める努力が必要です。

 

ノレンを見せて絞りの重ね染めを説明する新谷幸子(スタッフ)

ミシン縫いとソヨゴの染めを説明する榎本玲子(スタッフ)

 

 3:染色後の布処理 

 (1)媒染剤の悪影響

  媒染剤は普通に水洗いをしても繊維の内部に残り、長期に渡り布を痛めていく

  特にミョウバンは繊維に残りやすいし、鉄分は布を痛める

 (2)媒染剤の除去

  市販の専用除去剤を使用してもよいが、家庭用の中性洗剤を利用する

  ぬるま湯1リットルに2t程入れかるく揉み洗いを5分、その後すすぎ洗いを充分する


その他・フリ−ト−ク

参加者の皆さんが大変熱心にメモをとり多くの質問をされました

1:木綿布を好みの色に染める方法

2:藍の生葉染めで木綿布を濃く染める方法

他に、草木染の引き染め方法や野染め、紅花染めなど、多くの意見交換がされ充実の時間を持つことが出来ました。(予定を大幅に延長10時30分、今夜はここまで。続きは明日にします。)


 

実技講習 [手描き模様付け]

 草木染に手描き模様を付ける 

 

可能な技法
上描き・・液体植物染料と一液用媒染剤
      墨や顔料、樹脂顔料等
抜染・・・・抜染剤の使用
      植物染料用抜染剤
      藍染用模様のり
      いずれも型、筒描き、素描きが可能
      その他抜染効果のある助剤など
作業工程
布を貼る→糊を作る→布に描く→乾燥→水洗
初めて抜染筒描きをする参加者

藍染めや草木染では抜染技法と絞り技法やローケツ技法を併用する事によって表現の幅が広がります。筒描きや型紙を使用してオリジナル模様やイニシャルを入れましょう。

今回の参加者の皆さんは、「蔓草模様」のハンカチに手描きで枝と蔓を抜染、名前のイニシャルなどを入れていました。皆さん、筒描きが初めてとは思えないほどのきれいな線が出来て驚きました。

以上で、今回の草木染講習会の全てのスケジュールが終了、皆さん本当にお疲れさまでした。

今回の染めの方法を、それぞれの方が、ご自身の住む地域で発表されますます草木染の楽しさが広められることを期待しております。(レポート:Shigeru)


この講習会は2001年6月にも予定されています。絞りの重ね染めを美しく染め上げるコツは、実際に絞って感触をおぼえることです。

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