能登草木の染研究室・通信Vol.4

2000年  7月  5日   発 行

新 谷 工 芸 ・  新 谷 幸 子

 

草木の染め基本(1) タマネギで染める

 草木の染めで最も身近かなものの一つにタマネギ染めがあります。タマネギの外皮を集め紙袋に入れて乾燥保存し1年中使用します。ミョウバン、錫媒染で赤みの黄色、アルミ媒染で黄土色、銅媒染で金茶色、鉄媒染で黒緑味の茶色、鉄と石灰で焦げ茶色を染めます。家庭ではミョウバンを使って染めてみましょう。同じタマネギの液を使っても媒染によって以下のように発色が変わります。

タマネギは絹はモチロン染まりますが、木綿にもしっかり染まる非常に良い染料です。

     

酢酸アルミ媒染

酢酸銅媒染

木酢酸鉄媒染


用意するもの・・・・ステンレスボールかホーロー鍋又はガラス鍋、竹箸、漉し布(テトロン布など)、ザル、ポリバケツ、ミョウバン、染める木綿布(ハンカチなど)

草木の染め基本工程・・・ほとんどの植物をこの基本工程で染める

工 程

図、画像

詳細、コツ  

 

 1: 抽 出

 

  植物を洗う
  水を加える
  20分間沸騰
  布漉し
  濃い色の抽出
  全液を混合

 

 2: 浸し染め

  1回目
  布を入れて加熱→
  80℃以上で20分間
  染める

  放冷

 3: 水 洗 い


  余分な色を流す
  色溜まりを落とす

 4: 媒 染

  室温で20分間
  布を動かし続ける

 5: 水 洗 い

  すすぎ洗い

 6:2回目の染色

  布を入れて加熱→
  80℃以上で20分間
  染める

  放冷 ↓

 7: 水 洗 い

  すすぎ洗い

 8:2回目の媒染

  室温で20分間
  布を動かし続ける

 9: 水 洗 い

  最後は水1リットルに
  中性洗剤を2cc

  すすぎ洗い↓

 10: 乾 燥

完成

常温 → 加熱

上下をよく動かす

 1:染め液を煮出す

(1)タマネギの外皮の汚れを洗い落とし、ステンレスボール(ホーロー鍋、ガラス鍋)に入れ、浸りきるほどの水を入れ、沸騰して20分間煮出す
(2)液を布で漉す
(3)煮出しを2〜3回くり返す 極端に薄い色は使わない
(4)煮出し液を全て混合して染料にする

 2:ハンカチを染める

(1)染める布を水に浸す
(2)布を軽く水切り
(3)ステンレスボールに布が浸りきるほどの抽出液を入れ(布の重さの40倍量程)布を入れる
(4)液を回しながら加熱し80℃以上で20分間染める。この間布の上下を切り返し常に動かし続ける
(5)液が冷えるまで竹箸で布を回すと、布が色素を吸収する

 3:余分な色を洗い流す

染めた布を2,3回すすぎ洗い

 4:媒染液を作る

(1)布の重さの30〜40%のミョウバンをぬるま湯に少しずつ溶かす
(2)布が自由に動く量の水にミョウバン液を加えて染めた布を浸す
(3)室温で20分間、布を回す

 5:水洗い 

媒染剤の溜まりを洗い流す

 6:2回目の染色

普通は1回目の残液を使用する→濃く染めるには染め液を新しいものに替える

 7:余分な色を洗い流す

染めムラを少なくできる

 8:2回目の媒染

濃い色にするには1〜8を繰り返す

 9:最後は中性洗剤で洗う

染め重ねる場合は途中で中性洗剤を使わないほうがよい

 10:陰干しで乾燥

風通しの良い場所で陰干し→空気酸化→堅牢度を高めるため蒸しをする場合もある

完成

 

布漉し

2:6:加熱浸染

4:8:室温媒染


9:最後は、しっかりと洗う

10:乾燥させて完成

 

濃い色の染めや堅牢な染めを行うには、新たな液で染と媒染の工程を何度も繰り返すが、花びらの色素などには染色に不向きなものもあり、何度染めても良くないものもある。


最近、草木染め、ハーブ染めと称して5分間ほどの染めや媒染を1回(短時間)しか行わないテキストも多く出まわっています。こうした手抜きの染めは、染着が不充分で耐光堅牢度(たいこうけんろうど:光りに対して長持ちしない度)が低く草木染めとしては質の低いものです。自然と関わることや植物と親しむことは人間の都合や勝手な方法で手抜きをすることではないはずです。せっかくの植物の色素です。しっかりと布に染め付けてその輝きを楽しんで欲しいものです。


草木の染:基本用語(1)

媒染(ばいせん)

媒染剤と種類
草木の抽出液で染めた布や糸を発色させるため、植物の色素に金属イオンを結合させる。古くは植物の灰の上澄み液や泥の中に浸すことによって発色させていた。現在では酢酸アルミや酢酸銅、木酢酸鉄液、ミョウバン、石灰液なども使用している。

媒染剤の使用量
草木の染料は動物性繊維(絹、毛)には良く染着するが植物性繊維(綿、麻)には染まりにくい物が多い。また、絹や毛は媒染剤と繊維自体が結合するので媒染過多にらないよう注意が必要。一方、木綿や麻には色素分だけ結合するので媒染剤を多い目に使用する。

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